2016年1月28日木曜日

バンドやろうぜ⑥〜ハム編〜

ステージに置かれた、3つのハム色のタンバリン。
だいぶ、くたびれている。
三人の努力の証でもあるんだ。

今日ボクはハム工場を休んで、このライブハウスにいる。
そう。Hamumeを見るために!
身体にぎゅっと力が入る。ボクの目は涙でにじんでいた。

「関東工場の工場長!今から泣いてどないしますの?メンバー、驚いてしまうで!」
大声でボクに話しかけ肩を組んできた男がいる。
「あ!関西工場の工場長!いらしたんですか!?」
関西工場長は、ハムで出来た昇り旗を背中にさしている。
「あ!すごい!この旗、ハムで出来てる!」
「せやで。今日は、新生ハムームの記念すべき初ライブや。これぐらいの気合い当たり前や。工場は休みにしたんやで」
その言葉を聞いて、ボクの心がもやっとした。

「新生Hamume」

そうなんだ。ボクは、今までのHamumeが好きだったんだけど、今日からガラっと雰囲気が変わってしまうという噂だ。
「中田ハムタカにオファーしたけど、断られて、ハムスターに頼んだらしいで」
「そんな…。ハムスターが曲を作ったんですか?大丈夫かな」
「でも、そうとうな神曲らしいんや」
「神曲、ですか…」

ライブハウスの照明がふっと消えた。
とうとうHamumeの出番だ!
ボクの心臓は飛び出してしまいそうだ。

三人は、天女のようにステージ場に現れた。
違う…、ボクは思わずつぶやいた。
今までの彼女たちとは目の輝きが違う!
これは、そうとうすごいライブになるぞ。
ボクはそう予感した。

「それでは1曲目。聞いてください!」
「私たちの新曲!」
「コンピューターハム工場!」

♪コンピューター加工食〜!
 基本ピンクじゃないと 食事時に
 チーズじゃないの?と 間違えるの
 求めるものはいつでも 自然食よ 
 食べたら太るだけ…

「な!なんや!この暗い曲は!つーか、うっすらハム否定してるやないか!俺たちの職業も否定されててあかん!」
「関西工場の工場長!おちついて!」
「落ち着いてられまっか!つーか関東工場の工場長、加工食バカにされてくやしくないんでっか!!」
関西工場の言う通りだ。ボクもショックだ!こんな地獄みたいな曲聞きたくないよ!

「それではつづいて2曲目!…チョコレートドーナツみたいなハム!」


曲のタイトルもぐずぐずだし、ボクはどうやって応援していいかわからなかった。
メンバー達がすごくキラキラしているのがボクをより複雑な気分にさせた。

新生Hamumeの重たい地獄の門は今、開いたのだ。