2015年2月24日火曜日

バンドやろうぜ③〜ウインナー編〜

冷たい夜風で薄皮が凍り引きちぎれそうだった。
でも大丈夫。俺の薄皮は冷たさで張り裂けたことは一度もない。

俺は、熱い熱い湯でしか爆発しない。

そう。俺はトップ オブ ウインナー。

明日は、薄皮をパリっと破れるくらいライブハウスを沸き立たせてやる。
もう、生ゆでのライブなんかしたくないんだ。
見とけ!俺たちウインナーの真の実力を!

シャウエッセンは、アパートのドアを開けた。
大学に入学してから、ずっと住み続けているボロアパートだ。
フロトイレが別になっているのと
収納スペースが異常に多いので気にいっている。
でも、そろそろ新しい部屋に引っ越したい。
早く、音楽で生活していけるようにならなければ。

「おかえり」
部屋の中でトマトがにっこりと微笑む。
「来てたのか」
「うん。お腹すいたでしょ。山菜の炊き込みごはん作ったんだよ」
トマトはこたつからそろそろと出て台所へ向った。

シャウエッセンとトマトは1年前からつきあっており半同棲生活をしている。
トマトは、甲斐甲斐しく手料理を作ってくれる自慢の彼女だ。
いつも、相談に乗ってくれ励ましてくれるのもトマトだ。

「明日のライブ、観にいってもいい?」
「もちろん」
「ファンのコが嫌な思いしないように隅っこでみてるから」
「うん。まあ、別に、いいけど」

シャウエッセンは、お椀に盛られた炊き込みご飯を口に入れた。
トマトは、うつむき加減でパジャマ裾をいじっている。
最近、トマトはおどおどとして元気がないように思えた。

まあ、冬だしな。どうせ、夏になったら元気になるだろ。

シャウエッセンは、気にせずに食事を続けた。







2015年2月20日金曜日

バンドやろうぜ!②〜ハム編〜

ここは、地獄の監獄だ。
床は冷たく、出てくる食事は冷えきってとても食べられたものではない。
ここには何千と牢屋があり
それぞれ小さな部屋に閉じ込められた僕たちは、鉄格子から救いを求めてる。
さながらとうもろこしの身のようだ。

「ここから出してくれ!」

僕の叫びがむなしく響く。

「あのひまわりのタネが盗品だったなんて…知らなかったんだ」

涙が頬をつたい床を濡らす。
もう僕の人生はおしまいだ。

「おい。NO.10105!! 出ろ!」
ふいに現れた看守が牢屋の扉を開け、僕は首根っこをつかまれ廊下に放り出された。

「ほら! とっとこ歩け!」

訳が分からず、廊下を歩き、突き当たりのドアを開けた。
すると、そこには一人の高そうなスーツを着た老紳士が立っていた。

「君は、エレクトリックポップという音楽を創作できると聞いたのだが」

「え?」

状況が把握できずにいると、看守が隣にやってきて僕の太ももを鞭でぴしゃりと叩いた。

「答えんか!」

「はい!打ち込みの音楽を作っています!」

老紳士は、満足そうな顔であごを触った。

「そうか。では、君は今日からエレポップユニット Hamume のメンバーだ」

「ハムームって、まさか」

「うむ。Perfume みたいなかわいい曲を作ってくれたまえ」

「そんなこと急に言われても!」

僕は大声を出してしまったので、看守がまた鞭うちにくると身構えた。
だが、看守は僕の方を見ていなかった。

「では、暗く冷たい牢屋に戻るかね? 君に選択肢はないんだよ」
老紳士は、僕を見つめ微笑んだ。

「はい。わかりました」

そして、僕は解放されることになった。