2014年8月28日木曜日

幽霊会議③

「おまえらみたいな小娘に、おらの大事な米はやらん!」
新潟の米農家、友蔵は空に向かって怒鳴った。

「お願いします!霊感が強い農家さんてなかなか居ないんです!」

「絶対、おいしいおにぎり作りますから!」

久美子とお姉さんは、頭を下げた。
お姉さんは、やっと霊感の強い米農家を見つけた。
幽霊が、農家と契約するのは至難の技だ。
このチャンス、逃すわけにはいかない。
霊界でも、おいしいおにぎりを食べれるようにしたい。
そんなお姉さんの熱い気持ちに、久美子は感動していた。
こっちに、来たら人(彼氏)を脅かそうということしか考えなかった自分が恥ずかしい
とさえ思った。

「お願いします!」

お姉さんと一緒に、頭を下げた。

「友蔵さんのお友達にも、絶対届けますから」

お姉さんのこの一言が響いたのか、友蔵はお姉さんと契約をしてくれることになった。

「お前さんたち、おかしいよな」
麦茶を飲みながら、友蔵はつぶやいた。
「勝手に、持っていけるのによ」
「そんなことしたら、私たちの評判が下がるわ。私、嫌なんです。勝手に人の物動かしたり、暗闇で待ち伏せしたり…でも、皆、このおにぎりを食べればきっと改心すると思う」
「ふむ」
「友蔵さん!ありがとう!きっとおいしいおにぎり作りますから」
「はいよ。気をつけて」

久美子とお姉さんは、大量の米俵を抱えながら新潟を去った。

「よかったですね、きっと、おいしいおにぎり出来ますね!」
久美子がお姉さんの顔を見ると、お姉さんは思いのほか厳しい表情をしていた。
「これからが大変よ。ほら、みてごらん!」
お姉さんの視線の先に、雨雲が立ちこめていた。雨雲はものすごい勢いで久美子たちの方へ向かってくる。
「あいつら…、いつもじゃましやがって。やるしかないわ…」
お姉さんは、米俵をひゅんっと頭に乗せ、両手をぶるぶるっと震わせた。

喧嘩が始まる。久美子は直感した。