2013年12月25日水曜日

宇宙もつらいよ

テレコマは、後悔していた。

なんか、かっこいいじゃんと思ってこの宇宙船の乗組員になろうと思ったんだけど。
実際は、すごく過酷な労働を強いられるしお給料も良くない。
残業というか、一度宇宙に出たらなかなか帰れないため録画したテレビ番組も見る事が難しい。

船内でツイッターは出来るため、余計にくやしい。
皆が地球でのんきに遊んでいるのが恨めしいのだ。

くそ〜と操縦席のシールをはがしながら思わず声を出してしまった。
テンションを上げるために自分の操縦席にイカすシールの貼ったのに怒られたのだ。
「俺以外座らないんだからいいじゃん!」
と文句を言いたかったが、社長は超怖いので何も言わず黙ってシールを剥がした。

社長。

マジ最悪な奴。
自分は何にもしないで偉そうにしやがって。

シールはすべて捨てるように言われたが一番レアなゲームセンターあらしの弟、とんがらしのシールだけそっとヘルメットの内側に隠した。

とその時、
ビービービーとけたたましいサイレンの音が宇宙船内に鳴り響いた。

「社長!敵艦発見!すぐ近くにいます!どうしますか!?」
一番前の操縦席の契約社員の田中さんが叫ぶ。

「うむ。攻撃開始!」
社長はあごを擦りながら指示を出す。
ぼんやりしていると何気なく社長と目が合い、
「おい!テレコマ!ぼさっとしてないで攻撃開始だ!」
と怒鳴られてしまった。

うう、嫌だあ…戦いになるとすごい揺れるから…吐きそうになっちゃうよ…
こんなことなら…家でエヴァンゲリオンとかガンダム観てりゃよかったつーの…

のろのろと戦闘準備に入ったが
敵も可哀想だなあと思ってしまい、かなり適当に攻撃のボタンを押した。

そんなわけで、敵に勝てるわけもなく船艦をだいぶやられてしまった。
社長は俺をギロリと睨み
後始末は、俺と田中さんの二人だけでやれと命令した。

「田中さん、なんか…さーせんした」
掃除をしながら謝った。
「うん?」
「いや…俺のせいで宇宙戦争負けちゃったから…社長、怒ってますよね…しかも田中さん関係ないのに」
「いいの!いいの!俺…好きなんだよね…宇宙が…」
田中さん、瞳が輝いてる。いい人だな。なんで正社員にしてあげないんだろう。
「俺…甘かったです!田中さん…俺に宇宙のことたくさん教えてください!」
俺は田中さんに頭を下げた。
「そうかそうかえらいぞテレコマ君。社長を恨んじゃいけないよ。社長も苦労人なんだよ…」
田中さんが社長の話を始めた途端、なぜか急に頭に牛丼が浮かんだ。
そこからは、もう牛丼のことしか考えられなくなり田中さんの話が苦痛になってしまった。



俺ってこういう所あるよなー